アブストラクト


第3回一般物理教室談話会

題目

交通流の物理

講演者

杉山雄規(三重短期大学)

日時

2000年10月31日(火)午後3時より

場所

日大理工・船橋校舎・13号館1階1315室

要旨

   交通流は車の集団から構成される多体物理系と考えられる。 自動車の運転は個人による差異があるだろうが、自動車が 集団となって運動する交通流においては、個々の車は集団 を構成する分子として基本的に共通の挙動原理に従ってい ると想定される。この仮定のもとでは、交通流を粒子集団 の運動のような物理的対象として解析することが可能とな る。本研究は構成分子としての車両挙動を記述する数理模 型(最適速度模型 : OV模型)を設定し、その相互作用によ る協同現象の結果として、現実の交通流の現象を理解しよ うとするものである。 OV模型では、渋滞は集団運動の結果として現れる一種の ソリトン解として記述され、臨界車両密度を超えた際に、 自由走行解が不安定になり渋滞解が安定化する。 実際の高速道路における観測データで車両密度/流量の関 係を見ると、特定の密度で流量の振る舞いが突然変化して いる。これは渋滞の発生を意味するが、OV模型による計算 では、ちょうど同じ値の臨界密度から渋滞解が安定化し、 実測データの様子を非常に良く再現する。これは渋滞形成 の現象が相転移の物理現象として捉えられことを示し、こ のような研究方法の有効性を示すものである。 さらに、この模型を基礎として、一般の道路状況におい て交通流の振る舞いを解析可能な結合写像OV模型を構築し、 シミュレーションの結果と実測データが良く一致すること を見る。


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