研究室紹介(2023年度)


中原研究室

「統計物理・集団のダイナミックス」


教授 中原明生 

非常勤講師 松尾洋介 、  非常勤講師 高橋秀典 
研究概要
    個々の構成粒子の運動は単純でも、 集団となると予想外に複雑な挙動(ダイナミックス)を示す現象は身近に多く存在します。 流体力学・熱力学・(非平衡非線形)統計力学の法則を駆使し、 実験・理論・シミュレーションの3手法を用いて、 自然界で見られる様々な複雑な現象のメカニズムを解明していきましょう。
以下に、本研究室で行っている研究テーマの説明をしておきます。
題目1:破壊の制御
内容1:物を破壊する時、 物はでたらめに壊れて破片が散らばるだけだと思われがちですが、 実は破壊にはある種の規則が存在するのです。 例えば、コップを床に落とすなどして急に壊れる場合には ガラスの破片のサイズ分布などが 統計的な分布を示すことが知られていますし、 また、ガラス板などを熱してから急に冷やすことによって壊れる場合には 急冷速度をコントロールすることによって 発生する亀裂の形状を直線状や波状など 規則的に制御できることが知られています。 破壊は通常あってはならないものだけど、 その壊れ方を制御できれば最悪の事故は回避できるので、 本研究室では破壊を制御できる事例を見つけていくことを目指します。
    具体的には、ペーストを乾燥させて収縮により破壊する現象を扱います。 乾燥破壊においては通常は 干上がった沼地のようなセル状の等法的な亀裂パターンが発生しますが、 事前にペーストを揺するなどしておくと 乾燥時に現れる亀裂パターンを縞状・リング状・ラセン状など 自在に制御できることを見出したので、 そのメカニズムを探っていきます。
題目2:複雑流体のダイナミックス
内容2:複雑流体とは、水などの単純な低分子から構成されるニュートン流体とは違い、 ソフトマター(高分子・液晶・ゾル・ゲル・ペースト)、 粉粒体(砂・粉・お米)、車、微生物、 などの 単純とは言えない構成粒子からなる流体のことを言います。 それらが集団として動こうとする場合、 状況に応じて液体の流動性・粘性と固体の弾性、 さらには塑性的な性質をも使い分けるため、 結果として複雑で面白いダイナミックスを示します。
    具体的には、 鉛直に立てたパイプ中の砂の流れと高速道路を走る車による交通渋滞の比較、 砂を上から流した時にできる砂山のパターンや斜面流の性質、 砂丘や波打ち際の模様、 鉛直方向に振動する板の上に敷き詰めた砂の作る模様やソリトンの発生、 鳥や魚や微生物の群れが作るパターンやその動き、 などがあげられるので、 これらの様々な複雑流体のダイナミックスを調べていきます。
題目3:パターン形成
内容3:「パターン形成」という分野は 「物の形がどう形成されるか?」を研究する分野です。 例えば、雪の結晶は単に水分子が集まってできているだけですが、 その形は単純な球とは限らず、 状況に応じて六角形の結晶のまわりに様々な形の枝が生えているのは、 皆さんも写真などで見たことがあると思います。 たしかに、生物系の形態形成の中には すでに遺伝的に形が決まっているものもありますが、 生物現象も含め自然界で現れるパターンの多くは 単純な物理法則によって支配されていることが多いので、 様々なパターンの形成メカニズムを探っていきます。
    具体的には、フラクタルを含む不思議な結晶のパターンの形成、 ベロゾフ・ザボチンスキー反応などの化学反応系で見られる 自発的なリズムの形成や引き込み(同期)現象やカオスの発生、 バクテリアの集団(コロニー)が形成する幾何学的な空間パターン、 リーゼガング・リングなどに見られる空間的に不連続ながら規則的な沈殿模様、 などがあげられます。
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研究設備
倒立顕微鏡、純水製造機、恒温恒湿機、滅菌乾燥機、オートクレーブ、 クリーンベンチ、分光光度計、電子天秤、粘度計、水平振とう機、 鉛直加振機、レオメーター、レーザー変位計、ヘルムホルツコイル、 超音波発信機、万能試験機

卒研生・大学院生リスト

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